ローカル屋台「これください」で暮らす毎日|バンコク街角ダイアリーズ
はじめに
二〇二五年、六月。今年もタイに入った俺はタイ南部のハートヤイからバンコクまで、約一ヶ月をかけて旅をした。陸路で街をまわりながら、徐々に北上するのんびりとした旅だ。(その時の記事は『タイ南部の旅』からどうぞ)そんな中、今年は最初の一ヶ月で旅を一旦お休みとした。旅と同時に、もう一つやりたい事があったのだ。ズバリ、それはタイ語を学ぶこと。それでいうと、ジャンプの主人公なら急激に強くなる"修行期間"そういう場面のように思っている。旅を始め、壁にぶつかり、修行期間があり、強くなりまた旅に戻る。生涯これを続けるのが主人公。お察しの通り、すでに俺はバンコクに暮らしタイ語学校へ通っている。そして、あっという間に三週間が経っている。容赦の無い早さで今年が過ぎていく。はたして地球は、本当に正確な時間を刻んでいるのだろうか?ガキの頃は無限とも思えたが、なんと恐ろしい。これはそんな俺の日常、非観光、バンコクローカルエリアでの暮らしを綴ったものである。
「屋台飯クイッティアオ」
今日はとても天気が良かった。雨上がりの晴天ってやつだ。学校は午後からで、その前にしっかりと昼飯を食うのが日課になっている。学校があればバスに揺られ、学校が無い日は繁華街に出る予定も無く、旅行者の殆どいないエリアで暮らしている。今日の腹ごしらえはRama3通り沿いの青空レストラン。おばちゃんが一人で切り盛りするクイッティアオの屋台は、パラソルで遮る日差しの下に、四人掛けのテーブルをいくつか並べた簡易的なストリートレストラン。青空食堂とか、青空レストランと俺は呼ぶ。タイでの最高な文化の一つだよな。ローカルで混む屋台飯はまず間違いなく美味い。安い美味い早いの三拍子が揃っている。そして日によっては、サウナのように暑い。ましてやここはクイッティアオ屋。タイ式の麺料理、冷やし中華のように冷たい食い物では無い。夏に食う鍋みたいな、温まる一品だ。そして今日はここ最近で一番暑かった。危ないか?いや、立ち向かえ!勝利をこの手に!
ん~、悩む。中華麺かセンレックか。クイッティアオの基本はセンレック…ん~。今日はセンレックだな。注文をしてから、やっぱり中華麺も良かったなと心が動く。ここはクイッティアオガイ(鶏)専門なのであとはおばちゃんが良い感じに作ってくれる。選ぶのは麺、あとはサイズだ。無料の野菜はもやし、ゴーヤ、ハーブがある。ゴーヤは夏バテにいいからね。ありがたい。タイの小さなゴーヤは生でも食える。辛い料理との相性が良く、ビターとスパイシーで大人の味さ。あとは鶏の関節かな?骨っぽい部位でその煮込みもトッピングはご自由にだった。器を持って席に着くと、パラソルの隙間から日差しが入る。この席は危ない。ささっと向かいの席へ移動した。


麺を何度か持ち上げると、湯気がモワッと立ち上った。少し冷ましたい俺。ふーふーっ、そして一口。うんうん、うむうむ。「おばちゃん!いい味出てるぜ!」ハーブの爽快感が体感温度を一瞬下げる。ハフハフハフと食べていくうちに、内臓からカッカカッカと体が火照る。いや、たぎっている。ガブガブと飲む水。夏バテが始まりつつあるようだ。
そうこうしていると、ドドドっと現場系の男の子達が昼飯に来た。混み合う屋台前。ひとり、ひとりと出来上がった器を持って席に座り、勢いよく食べ始める。相席なので俺の隣にも一人。彼ら、汗もかかず、涼しげな顔でバクバクと食っている。ウソだろ?俺は若干意識がぼんやりとしてきているのに。早く食って早く涼しい場所に避難しないと危ないだろ!と思っているのは俺だけのようだ。つかの間の昼休憩を楽しむ、ローカルの暑さ耐性は極みのレベルにある。そんな中、俺はまたガブガブと水を飲むのだ。

一日の中で、楽しみな時間といえば、やっぱり飯。初めての料理にだって、初めて行く食堂にだってワクワクで興味津々である。バンコクもローカルエリアへ行けば、ぐっと暮らしが近くなる。食堂や屋台は優しい値段で頑張っているし、真の庶民の味方である。地元の人が行くような食堂や、屋台飯でばかり食事をしている俺。今は「アオアンニーカップ(これください)」でなんとかやっているが、これでタイ語が話せれば、ちょっとしたお話ができるようになったら、いよいよ地元住民への仲間入りも夢ではない。バンコクでの趣味は完全に食べ歩きになっていた。安い美味いこそ正義。Google mapsには、今日もピンが増えていく。
「旅はまだまだ続く~」