『タイ一人旅の予算や持ち物を調べる前に。バックパッカーが教える「圧倒的無駄」の効能』

「パスポートの値段割引!パスポートの取得率を上げよ!」そんなような、ネットニュースの見出しが目に入った。

「へぇ~いいな~」

なんて鼻をほじりなら思っていると、なんでも今、日本ではパスポートの取得率が17%とからしい。

むむむ?本当なのか?

俺はかつて20代の頃、旅が全てを解決してくれると思っていた。毎日の日常がモヤモヤと過ぎていき、ただなんとなく生きているような、濁った空気感、不安、退屈、そんなようなものを全て吹っ飛ばしてくれるのが俺にとっては旅だった。

ヒッピーのような生活に憧れ、「バックパッカー、1人旅、予算」そんな情報も「地球の歩き方」で見ては地図を見返し、ここも良さそう、あそこも良さそう、とここではないどこかへ夢を馳せていた。

そんな中、旅人が減っていたとは。

むむむ、なんてことだ。なんて事だというほどのことでもないのだけれど、本来なら、道草、寄り道、まわり道こそが楽しいはずだろうに。

とはいえ、とはいえとはいえ、俺はまた旅人が増えるような気がしている。というのも、もう1回ヒッピーブームに近い何か、デジタル社会へのカウンターカルチャーとして新しいムーブメントが起き、同時にバックパッカーが爆発的に増える。

そう、この世はまさに大海賊時代!

のような事が起きるのでは?と思っている。かつてのカオサン通りのような、現代のネオヒッピーの溜まり場、そんな場所もできるかもしれない。

かつての旅人達は、金が無いなら無いで、節約に節約を重ね、貧乏だろうが旅をした。旅は自分の身を一つ。素っ裸の自分と肩を組んで、人生の根本的喜びを再び感じる時間なのだ。ただ、自分の足で歩いて、自分の時間を取り戻す。

先人達はこう言った。「かわいい子には旅をさせよ!!」と。

タイ一人旅に「タイパ」は不要。効率を捨てることが自由への近道

なにか一つ、俺が世界で1番だと言える事があるとしたら、とにかく急ぎたく無いの精神であろう。

Mr.Norushと呼ばれ、疑いなく1番自由な奴が海賊王だと思い込んでいる。ガキの頃は追い詰められると、「あぁァァ~ッッッ」となり、TP-D、つまりタイムパフォーマンスデストロイヤーを発動しがちな若造でした。発光した状態である。それでもと健気に生きていました。

「ここで諸君らには衝撃の事実をお伝えしたい。時間はのんびりと使えば使うほど幸福度が高いのだ」

効率、コスパ、タイパ、最短、それではダメ。そんな軟弱な思想ではもう辻褄が合わないところまできている。無駄……圧倒的無駄…。あえて逆の心理をつく、入れる、少年スイッチ。そこで起こるパラドックス。

幸福とは…。

本来、我らの居心地の良い暮らしというのは、空白の時間が日常に散りばめられているかどうかである。朝コーヒーを飲むなら、のんびりと湯が沸くのを待つのもいい。朝ごはんにだって多くの時間をかけ、1日にやれる事といえば、僅かだかが、そこには感謝と大いなる生命の営みがある。大仕事をした後はご褒美だって必要だ。疲れた体にほっこりと、充実感を抱いて眠るのだ。こんなような事でもってバランスが取れるのだ。

今や、1日の情報量の多さと言えば、大気圏を突破する勢である。何かをしながらと心ここに在らずは、星の屑ほどに儚いのが常である。

我らが自由を要求して何度踏みにじられたか。我らは襟を正し、この戦局を打開しなければならぬ。

そこで今、我々はアンチタイムパフォーマンスの旗を掲げ敵に一矢報いるのである。

国民よ!悲しみを怒りにかえて、立てよ!国民!

ジークジオン!

おっと、俺の中の「やらせはせんぞ!」が出てきてしまった。ところで、ここはひとつカウンターカルチャーとしての旅を正式に薦めたいのである。

タイ一人旅の予算や物価を気にするな。情報はワクワクを薄くする

旅は長期が面白い。

「タイ 一人旅 予算」と検索すれば、もっともらしい数字がいくらでも出てくる。だが、そんなものは全て無視である。田舎の屋台飯はまだまだ安い。生活費だって許容範囲。何より、情報は安心と同時にワクワクを薄くする。

タイこそひとり旅をするのにちょうど良い。

基本的には安全だし、飯は美味いし、英語は通じたり、通じなかったりするし、日本語しか分からなくても、身振り手振りでどうにかなるものである。足りないものは全てセブンイレブンで揃うしね。

タイ人については、アユタヤ時代から寛容性はDNAレベルで刻まれている。器が広く他の国から来る人達を、微笑みと共に受け入れてくれる。時には親身に助けてくれる。

ロバート秋山さんに似ている仏像

そりゃあ、どこの国にも悪い奴はいる。あれは、夜中の便でスワンナプームに到着した時だった。空港から適当なタクシーに乗り、カオサンロードを目指していたのだ。

「明日は一泊でパタヤに行くよ~」

なんて話をしていたら、タクシーは真っ暗な車屋に到着した。当時、俺は英語も大して分からない無知なガキである。もちろん土地勘なんてものは無い。「ここどこ?」と不安に駆られる。「こっちこっち」と言われるがまま、タクシーを降りて車屋のデスクへと座った。

タクシーの運転手と奥から出てきた20代くらいの男が言う。

「パタヤまでのバンをチャーターしなよ!」と。

面倒な展開である。貧乏バックパッカーの俺にそんなお金は無いのだ。やれやれだぜ。俺はバックパックを背負い、プンプンと怒って車屋から出て大通り、また流しのタクシーを拾った。おやおや?案外すんなりと出れてラッキーだった。

追ってきたさっきのタクシー運転手は手を出して「マニー」と言う。乗車賃をよこせと言ってくるのだ。俗物が。俺は全てを無視して、新しいタクシーに乗り込み「go  go  go」と、とりあえず車を発進させてもらった。

俺が坊やだったばっかりに。

時にハプニングもやってくるのが旅なのだ。

バックパックを盗まれ、コンビニのビニール袋片手に、それでも旅をしていた強者もいたな。最低限の着替えを入れたコンビニの袋は頼りなく見えたが、それでも彼は笑っていた。

知ってるか?旅は人をタフにするんだぜ?

だが、こんなことは滅多に起きない。俺はタイで多くの人に助けられ、優しくされてきた。時にはあまりの暑さに軽い脱水症状、ヒッチハイクで町まで帰ったり。たまたま一緒に飲んだ奴が家に泊めてくれたり。日帰り観光に連れて行ってもらったり。気付いたら飯を奢られていたり。

ええぃ、現代の竜宮城かと俺は思ったね。

30代でバンコク移住を決めた理由。ジョジョに学ぶ「結果」より大切なこと

朝の日差しが窓から差し込む。部屋は明るく、窓の外は埃っぽい。最近はPM2.5の影響で空気が悪い。俺はベランダに出ると、最近植えたアボガドの成長を見る。

少し、昨日より成長している。

アボガドの成長は早く、目に見えて大きくなっているのが分かるので嬉しい。俺もこのくらい成長が早ければ、と思うばかりである。

只今生粋の38歳。ぴちぴちのおじさんど真ん中。完全に無視を決め込んでいるが、世間からの風当たりは強いに違いない。いい歳して何してんだ?と哀れみの声が聞こえてきそうである。だが、そうだな…わたしは「結果」だけを求めてはいない。「結果」だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ……近道をした時、真実を見失うかもしれない。やる気もしだいに失せていく」−ジョジョ第5部より、名セリフをお届けしたい。大事なことは既に漫画に教わった。

いや"心"で理解できたのはここ最近になってからかもしれない。

全国民の道徳の時間には日本の漫画を読ませるべきである。俺が子供だとしたら、その時間の集中力は凄まじかったに違いない。

部屋に戻り窓を閉める。常温の水をペットボトルでがぶ飲みし、歯を長いこと磨く。コーヒーを入れる。今、俺はバンコクで暮らしている。タイが好きすぎるあまり、ついには移住を夢見ている。我が行動に一点の曇りなし。もう永遠に旅の途中のような気でもって人生が流れていっている。俺にはもうどうする事もできないのだ。入れた少年スイッチは我が手を離れた。本能…圧倒的本能の前に、正論はもう届かない。

それでも旅は良い。

それはいつも行く飲み屋で、酒を飲み馬鹿騒ぎする1日の夜とはまた違う。まぁなんとかなるでしょ。と心に余白ができるのだ。なによりも、いつでも旅に出るしな~っと思うと気が楽である。男はつらいよで、人間は何のために生きてんのかな?と満男が聞くシーンがある。「うーん、何て言うかな。ほら、ああ、生まれてきてよかったなって思うことが何べんかあるじゃない、ね。そのために人間生きてんじゃねえのか」と寅さんは答える。

俺という人間はそういう事ばかりでもって構成されている。

ナーガの雲に奇跡は近い

「おわりに」

効率よく、失敗せず、賢く人生をショートカットしたい……。そんなような概念と旅は正反対である。21歳の時、俺はカオサン通りでガンジャを吸い、警察に捕まったことがある。タイの警察署で5万円の罰金を払って、無知で、バカで、根拠なきポジティブと若さゆえの一点でのみ旅に夢中になっていた。なるべく物価も安くて、飯もうまくて、治安も良くて、ほっこりできる場所で、結局俺の中での楽園はずっとタイだった。多くの国へ行く代わりに、タイで多くの街を見た。旅もいつかは終わる。金も無ければ、特別なスキルもない。日雇いやバイト、若い頃は数十万が貯まれば、また懲りずに旅をした。

旅は人生を救うのか。

お気楽なもんで、おじさんになった今も旅が好きだ。タイが好きすぎてバンコクに住み始めてしまった。将来どうなる事やら……「まぁなんとかなるだろ」と思ってしまうのが旅を通じて形成された精神性だとしたら、旅もなかなかにやってくれる。

良いのか悪いのか、答えは永遠に謎である。

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